概要

『三体』(さんたい)は、中華人民共和国のSF作家劉慈欣(Liu Cixin)による長編SF小説。2006年5月から12月まで、中国のSF雑誌『科幻世界(中国語版)』で連載され、2008年1月に重慶出版社によって単行本が出版された。本作は「地球往事」三部作の第一作である。

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本作、またこれを含む「地球往事」三部作(『三体』三部作ともいう)は中国において最も人気のあるSF小説の一つとされ、2015年時点で50万組以上を売り上げている。また、本作は2014年11月にケン・リュウによる英訳が出版され、これも複数のSF賞にノミネートされるなど高く評価されている。2019年時点で全世界累計発行部数は2900万部を記録しており、20か国以上の言語で翻訳されている。

日本語版は2019年7月4日に早川書房より発売された。日本語訳は、光吉さくらとワン・チャイの共訳による原書からの翻訳原稿を、英語の翻訳が専門のSF翻訳家である大森望が、著者とケン・リュウの協議により変更の加えられた英訳版とも比較し改稿したものである。

2022年3月現在で中国のTencentとアメリカのNetFlixにてドラマが作成中。テンセント版は登場人物は中国人主体なので原作の背景(紅衛兵によるつるし上げなど)が踏襲できそうですがネットフリックス版はゲームオブスローンズの俳優などが演じるようで背景をどのようにするのかわかりません。2021年の終わりにイギリスで撮影が行われていると報じられた後、2022年9月頃に一部映像が公開になり
2024年3月21日公開予定。三体 Netlixドラマの状況の方にそのニュースの抜粋を記載しました。
テンセント版の実写ドラマは2023年10月よりWOWOWにて配信中で、12月末に21話~30話が公開されるとのことでした。メイキング映像も4本あるとのこと。

comipoというマンガアプリにて漫画版の「三体」が連載?されれています。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000200.000089066.html

2024年6月18日時点でチャン・イーモウ監督で「三体」の映画化が行われるとのニュースがありました。
https://www.cinematoday.jp/news/N0143536

2022年7月三体のファンの宝樹(バオシュー)さんの書いたスピンオフである「三体X 観想之宙」が翻訳され刊行されるとのことです。最初は公式とは関係がなかったようですが後に公認されたそうで、よほど素晴らしい出来だったのでしょうね。
「三体III 死神永生」の裏で何があったかを描いた作品でした。話は圧倒的に壮大で、すごく上手に話が(伏線だったかのように)回収されていって驚きました。
エンドレスエイトに言及されていたのは少しやり過ぎだと思いましたが。

タイムライン

時系列についてはこちらの三体作品中のタイムラインに記載しています。

あらすじ

※注意:抜き出してまとめたものなので、本質的な話はほとんど載っていません。

第一章 沈黙の春

1 狂乱の時代 一九六七年、中国

1967年の中国より話は始まる。

文化大革命による混乱のさなか、紅衛兵(Red Guard)の組織である四・二八兵団(the April Twenty-eighth Brigade。検索しても出てきません)に対する紅色連合(Red Union。1966年初頭に結成とのことですが、検索しても何のことか見つからず。英語WikipediaはRed Onionしか出てきません)の攻撃二日目。紅衛兵の少女が死ぬ。

北京のある大学のグラウンドで批判闘争大会にて反動的学術権威(紅衛兵らに目の敵にされた学者達)とされた葉哲泰(イエ・ジョータイ)がつるし上げられ、妻である紹琳(シャオ・リン)にも口撃される。最終的に、葉哲泰(イエ・ジョータイ)は紅衛兵の少女たちに暴行を受けて命を落とす。

そこには葉哲泰(イエ・ジョータイ)の娘である葉文潔(イエ・ウェンジエ)もいた。

葉文潔(イエ・ウェンジエ)は親しい友人である大学教員の阮雯(ルアン・ウエン)のもとを訪ねる。阮雯(ルアン・ウエン)もまた紅衛兵に攻撃にさらされており、荒れた家の中を片付けてハイヒールを履き、睡眠薬で自殺していた。

2 沈黙の春 二年後、大興安嶺(だいこうあんれい)

舞台は1969年へと進む。
内モンゴルで葉文潔(イエ・ウェンジエ)は労働兵団に属し、山の開墾の肉体労働をしている。話の合わない労働階級の人間に囲まれる中、取材に訪れていた兵団の機関紙《大生産報》の記者白淋霖(バイ・ムーリン)と親しく話をする関係となった。白淋霖(バイ・ムーリン)は葉文潔(イエ・ウェンジエ)にレイチェル・カーソンの「沈黙の春」を貸し、環境破壊を告発する中央政府への手紙の代筆をさせる。三週間後に連隊の張(ジャン)主任が訪れ、「沈黙の春」と手紙をもとに糾弾を受ける。

審判を待つ葉文潔(イエ・ウェンジエ)のところに中級裁判所軍管会の軍代表、程麗華(チョン・リーファ)が訪ねてくる。程麗華(チョン・リーファ)は葉哲泰(イエ・ジョータイ)に何らかの問題を押し付けるため、葉文潔(イエ・ウェンジエ)の妹葉文雪(イエ・ウェンシュエ)の手による核実験のプロジェクトに葉哲泰(イエ・ジョータイ)が関与したとの文書にサインを迫ったが葉文潔(イエ・ウェンジエ)はサインをしなかった。激怒した程麗華(チョン・リーファ)は葉文潔(イエ・ウェンジエ)と部屋を水をぶちまけ去り、葉文潔(イエ・ウェンジエ)は極寒の拘置所にびしょ濡れのまま残された。

3 紅岸(一)

高熱を出した葉文潔(イエ・ウェンジエ)は朦朧とした中輸送ヘリへ運び込まれ、紅岸基地の政治委員雷志成(レイ・ジーチョン)、最高技術責任者楊衛寧(ヤン・ウェイニン)に会う。
楊衛寧(ヤン・ウェイニン)は父葉哲泰(イエ・ジョータイ)の教え子で葉文潔(イエ・ウェンジエ)は意外な再会に驚いた。
楊衛寧(ヤン・ウェイニン)は、程麗華(チョン・リーファ)が葉文潔(イエ・ウェンジエ)に重い刑を求めており、重くて10年、減刑されて6,7年の罰を受けるか、紅岸基地で最高機密レベルのプロジェクトへ参加するかを選ばせた。プロジェクトへ参加した場合、一生ここを出られないといわれたにもかかわらず葉文潔(イエ・ウェンジエ)はあっさりと参加を選んだ。あまりの即断に、むしろ楊衛寧(ヤン・ウェイニン)が戸惑う。

第二部 三体

4 〈科学境界(フロンティア)〉 四十数年後

ここで時は40数年飛び、2010年頃。主人公はナノマテリアル研究者汪淼(ワン・ミャオ)と粗暴な警官史強(シー・チアン)に代わる。

汪淼(ワン・ミャオ)は自宅に突然やってきた警官の責任者、史強(シー・チアン)隊長の粗暴な振る舞いに強い不快感を覚える。警官とともにやってきていた陸軍の少校(他の軍で言う少佐。数百人の大隊の長レベル)によると、あくまで調査などではなく、会議への参加要請だった。汪淼(ワン・ミャオ)は郊外にある作戦司令センター連れて行かれる。そこでは大ホールで会議が行われており、常偉思(チャン・ウェイスー)陸軍少将が主催し、米国・陸軍の大佐、CIAまで参加している。
科学フロンティア〉に関連して科学者が3人連続して自殺するという一連の事件が起きている。3人のうち最後の一人が楊冬(ヤン・ドン)だった。

汪淼(ワン・ミャオ)の開発している加速器(二百億元)で一番最初に実験するのは楊冬(ヤン・ドン)の超弦理論モデルの検証実験の予定だった。楊冬(ヤン・ドン)の性別は一般に知られていなかったが、女性であることに皆驚いていた。
楊冬(ヤン・ドン)は2か月前に睡眠薬を大量に服用して死んだ。
会議には、楊冬(ヤン・ドン)の恋人だった丁儀(ディン・イー)博士も出席している。

楊冬(ヤン・ドン)の遺書は白樺の樹皮で、こう書かれている。

 すべての証拠が示す結論はひとつ。これまでも、これからも、物理学は存在しない。この行動が無責任なのはわかっています。でも、ほかにどうしようもなかった。

汪淼(ワン・ミャオ)は自身が開発に携わる素粒子加速器に楊冬(ヤン・ドン)が訪れた時のことを思い出す。汪淼(ワン・ミャオ)は彼女に一目ぼれをしていた。

常偉思(チャン・ウェイスー)と史強(シー・チアン)は汪淼(ワン・ミャオ)に〈科学フロンティア〉に潜入して捜査を助けるよう要請を受ける。学会で〈科学フロンティア〉に所属する申玉菲(シェン・ユーフェイ)と知り合って汪淼(ワン・ミャオ)は〈科学フロンティア〉に誘われていた。汪淼(ワン・ミャオ)は断るが史強(シー・チアン)に煽られて売り言葉に買い言葉で結局潜入捜査を受け入れる。

常偉思(チャン・ウェイスー)に送られて帰りの車に乗った汪淼(ワン・ミャオ)は運転手が行きは丁儀(ディン・イー)を乗せたと話したことから、丁儀(ディン・イー)の家に向かわせる。

5 科学を殺す

酔っぱらった丁儀(ディン・イー)と汪淼(ワン・ミャオ)は会話した。丁儀(ディン・イー)が語ったのは、世界にある3台の高エネルギー粒子加速器(1台は北米、1台はヨーロッパ、もう一台は中国の良湘)での実験結果が法則性もなくバラバラになって実験が成り立たない問題が生じていること。
これは

「物理法則は時間と空間を超えて不変ではないということを意味しています」
(「三体」 16%)
という事である。このことに絶望して楊冬(ヤン・ドン)は自殺していた。

丁儀(ディン・イー)は、自分は何も知らないが、想像もつかない力が科学を殺そうとしている気がする、と話す。
最後に丁儀は楊冬(ヤン・ドン)の母の住所を汪淼(ワン・ミャオ)に渡す。もし時間があったら会いに行ってほしいと。

6 射撃手と農場主

汪淼(ワン・ミャオ)は科学フロンティアでの議論(射撃手と農場主)の疲れを感じていた。休日、1988年製造のライカM2(2万元≒30蔓万円以上を持ち写真を撮りに出かける。汪淼(ワン・ミャオ)はモノクロフィルムを使うアマチュア写真家としてちょっとした有名人で、写真家協会に入会していて、大きな展覧会で二度入選したことがあった。
妻子は遊びに出かけている。家に帰り一人で昼食を撮り昼寝をした。目が覚めたのは夕方の五時。午前中に撮った写真を暗室で現像を始める。そこで汪淼(ワン・ミャオ)は1本のフィルムすべてに小さな白い数字が並んでいることに気づく。

1200:00:00

1199:49:33

1199:40:18

1199:32:07

1199:28:51

1199:15:44

1199:07:38

1198:53:09

34枚目 1194:50:49

35枚目、最後は1194:16:37。

数字は、背景が黒ければ白、背景が白ければ黒と、背景と対照的な明度の文字になっている。
まだら模様の、白でも黒でも読みにくい写真では暗い部分に白い文字で数字は書かれており、まるで何とか読み取れるよう苦労して並べたようだ。
写真の撮影時間と照らし合わせて、現像して現れた数字と合致するように1200時間からカウントダウンしていることに気づく。
汪淼(ワン・ミャオ)は1本のフィルムを撮りつくして現像すると、カウントダウンは継続していることがわかる。
李瑶(リー・ヤオ)にライカM2を渡して再度一本のフィルムを撮らせる。豆豆(ドウちゃん)の写真を撮ろうとしたが不吉な感覚があり汪淼(ワン・ミャオ)は妻を止める。
子供を含まない写真を一本分写真を撮らせて現像したがカウントダウンは映らない、再度汪淼(ワン・ミャオ)が撮り現像すると映った。

狂気を感じながら隣家の張教授(ジャン)に駆け込みコダック製デジタルカメラを借り息子とともに写真を撮る。
確認すると、汪淼(ワン・ミャオ)が撮った写真にはカウントダウンが映り、子供の撮った写真には写っていなかった。

この問題を時期では解決できないと考えた汪淼(ワン・ミャオ)は申玉菲 (シェン・ユーフェイ)へ連絡を取る。
切羽詰まった口調で会ってほしいと頼む汪淼(ワン・ミャオ)に、申博士は「来れば」とだけ告げて電話を切った。

申玉菲 (シェン・ユーフェイ)は比較的新しい通勤路線の沿線にある高級別荘地に住んでいた。リビングで申玉菲 (シェン・ユーフェイ)の夫、魏成(ウェイ・チョン)を見かけた。40歳くらいで誠実な知識人然としている。申玉菲 (シェン・ユーフェイ)の部屋を訪ねるとコンピュータの前でゲームをやっているのが見えた。彼女はVスーツを着て、ヘッドマウントディスプレイをつけていた。
ゲームのアドレスはwww.3body.netだった。

申玉菲 (シェン・ユーフェイ)はヘルメットを外してVR全身スーツを脱いで話を聞いた。フィルムは興味なさそうに眺めただけで、汪淼(ワン・ミャオ)のナノマテリアル・プロジェクトの状況について聞いた。そのあと、研究を中止するように言った。理由は説明しなかった。
何も質問には答えてもらえず帰ろうとした汪淼(ワン・ミャオ)の入れ替わりに、潘寒(ファン・ハン)だった。彼は〈科学フロンティア〉に所属する生物学者だった。

その夜、家で寝ていた汪淼(ワン・ミャオ)は深夜に目を覚ました。ゴースト・カウントダウンがカメラを通さず視界に映っている。その日、ナノテクノロジー研究センターに連絡して休みを取り、同仁医院で妻の独旧姓の有名眼科医に診てもらった。飛蚊症だといわれたが、数字が見えると言ったら心の病だといわれた。
汪淼(ワン・ミャオ)は全く納得できなかった。立ち去る前に、外部からの操作で人間に何かを見させたという事例があるか尋ねた。
医師は神船19号の医療チームに参加したとき、宇宙飛行士が見た例があると答えた。太陽活動が激しい時に高エネルギー粒子が上手くに衝突したことで生じたと説明した。

汪淼(ワン・ミャオ)は病院を後にして、ナノテクノロジー研究センターに出勤した。“飛刃”という超強度のナノマテリアルが製造されている。
ちょうどトラブルが生じており、実験室長が、不具合があり停止が必要となっていることを報告してきた。
実験装置は1年近く稼働が継続しており、多くのセンサーの感度が下がって測定誤差が増大しているがメンテナンスをしなければならない時期だったが、汪淼(ワン・ミャオ)が分子結合の3セット目の試験が終わるまでは停止しないと言い張っていた。汪淼(ワン・ミャオ)は申玉菲 (シェン・ユーフェイ)に言われた、研究を中止しろ、という言葉に従いメンテナンスのためにすぐ停止しろと言った。
(ジャン)チーフ・エンジニアに任せて汪淼(ワン・ミャオ)は申玉菲 (シェン・ユーフェイ)へ電話をした。
申玉菲 (シェン・ユーフェイ)は実験を中止しなければカウントダウンが進み、0になれば何かが起こると匂わせる。信じられない汪淼(ワン・ミャオ)が証拠を見せろと迫ると、「http://www.qsl.net/bg3tt/zl/mesdm.htm」(内容はモールス信号)を印刷し、宇宙背景放射を観測しろと言う。実験は3日間止めるというと、申玉菲 (シェン・ユーフェイ)は3日後、14日の午前1時から5時まで「全宇宙があなたのために点滅する」という。
(詳細はメールするといっていたが、この長いURLを電話で伝える意味はあったのだろうか?それもメールで良かったように思える)

7 三体 周の文王と長い夜

午前1時に汪淼(ワン・ミャオ)は丁儀(ディン・イー)に電話を掛け、国内に宇宙背景放射を観測する機関があるか尋ねる。
(読者は、汪淼(ワン・ミャオ)が一度しか会っていない、楊冬(ヤン・ドン)を失って失意の丁儀(ディン・イー)へ深夜に電話をするという扱いの酷さに衝撃を受ける)
丁儀(ディン・イー)は楊冬(ヤン・ドン)の母に会えという。

電話を切った後、なぜ申玉菲 (シェン・ユーフェイ)がなぜゲームなどをしていたのかが気になった。「www.3body.net」に接続したところ、Vスーツがないとできないゲームであることが分かった。早速研究センターへ向かい、従業員娯楽室にあったVスーツを着てヘッドマウントディスプレイを装着するとゲーム三体を起動した。
汪淼(ワン・ミャオ)は「海人(ハイレン)」という名前で登録してログインした。

ログインすると、そこは荒涼とした砂漠で、周の文王を名乗る人物と周の文王の従者と出会う。
周の文王は朝歌紂王に万年暦を届ける途中とのこと。食料があまりに少なく、乱紀のために訪れる気温変化もあり周の文王の従者は乾燥化する。
ゲーム内時間の夜、三人は二つの飛星を見た。星よりも大きく、ピンポン玉サイズの円盤で、飛行速度が速く、星空を移動していることが肉眼でもはっきり確認できた。
二つの飛星が見えるのは恒期が始まる予兆。三つの飛星が見えるときは決して現れないよう祈るべき兆候。
恒紀は1日から一世紀続く。西周では最長二世紀も恒紀が続いた。

水や食料の不足から、周の文王の従者は脱水化をした。三体人は身体の水を抜きぺらぺらの干物になることができる。それを巻物のように丸めて保存してもらうことになる。動けるようになるには再水化が必要で、そのためには水に巻物上の人間を投げ込んで水を取り込む必要がある。

周の文王と共に汪淼(ワン・ミャオ)=海人(ハイレン)は超歌へたどり着く。
超歌にはいたるところに巨大な振り子が多数ある。おもりは巨大な石の塊で、細い石塔の間にある数十メートルの橋から太いロープで吊り下げられている。動きが遅くなった振り子は兵士が石の下に垂れたロープを引っ張って揺らしている。

巨大なピラミッドがあり、紂王が宮殿としている。
恒紀が来たとき、国民を再水化するかどうかは王が選択する。乱紀の間はただ一人紂王のみが脱水化せずピラミッドの中で乱紀が過ぎるのを待つ。
紂王は黒衣に身を包んだ伏羲(ふっき)を紹介する。伏羲は、太陽とは気まぐれな神で、目覚めているときの機嫌は予測がつかず乱紀になり、太陽が眠っているときは呼吸が一定しており恒紀になると考えている。このため、大きな振り子を作り、太陽神に催眠術をかけようとしているが今のところ乱紀が続き時折恒紀は時折来ている状態が続いている。
紂王は煮え立った大釜を用意すると伏羲はそこに飛び込む。

紂王は周の文王を姫昌と呼ぶ。周の文王は太極図と64の卦を使い占いを行う。
41日間の乱紀、5日間の恒紀、23日の乱紀と18日の恒紀、8日間の乱紀、3年と9か月の恒紀となると占い、実際にゲーム内時間を加速したところその通りに変化が行い長い恒紀が始まった。紂王は再水化を指示する。しかし再水化してしばらくすると太陽は上らず、夜の空に飛星が3つ出る。
飛星が三つ出るのは長くつづく極寒の歳月を意味する。

紂王は脱水を指示する。
周の文王は釜に飛び込む。
紂王は「そうしたければログアウトしろ。この段階まで来たら、ゲームはもう楽しくないぞ」という。
大広間の出入り口の上に赤く光るEXITマークが現れ、大広間にいたプレイヤーたちはぞろぞろとそちらに歩いていき、汪淼(ワン・ミャオ)もそのあとに続く。外はすでに極寒で、10日間行きは休みなく降り続ける。この雪は二酸化炭素、ドライアイスの雪だった。さらに10日経つと、雪は凝固した窒素と酸素になる。絶対零度が間近となっている。
システムは

「この夜は四十八年間つづき、文明#137は極寒の中で崩壊しました。この文明は、崩壊前に、戦国期にまで到達しています。
 文明の種子はまだ残っています。それはいつかふたたび発芽し、『三体』の予測不能の世界で育ちはじめるでしょう。またのログインをお待ちしています。」

と星空をバックに表示した。

8 葉文潔(イエ・ウェンジエ)

ゲームからログアウトした汪淼(ワン・ミャオ)はナノテクノロジー研究センターを後にして楊冬(ヤン・ドン)の母親の住所へと車を走らせた。

そこにいたのは楊冬(ヤン・ドン)の母、葉文潔(イエ・ウェンジエ)。
一緒に葉文潔(イエ・ウェンジエ)の部屋に行くと、5歳くらいまでの小さな子が3人、遊んでいる。皆葉文潔(イエ・ウェンジエ)の近所の子だそうだ。
3人の名前は楠楠(ナンちゃん)と洋洋(ヤンちゃん)、咪咪(ミちゃん)。
汪淼(ワン・ミャオ)は楊冬(ヤン・ドン)の部屋に通される。

汪淼(ワン・ミャオ)は白樺の樹皮で作られたノートを見た。中は3歳頃の楊冬(ヤン・ドン)のノートで、いろいろな絵が描かれていた。葉文潔(イエ・ウェンジエ)は楊冬(ヤン・ドン)が理論に取りつかれていたため、測定が邪魔されていることが分かって命を絶った。

汪淼(ワン・ミャオ)は本題の、宇宙背景放射の観測施設のことを訪ねる。葉文潔(イエ・ウェンジエ)は中国国内に二か所あることを告げる
一つはウルムチ観測基地で、中国科学院空間環境観測センターのプロジェクト、もうひとつは中国科学院と北京大学の連合天体物理センターが共同で運用している北京近郊の電波天文観測基地。
葉文潔(イエ・ウェンジエ)は北京の方に教え子がいるとのことで汪淼(ワン・ミャオ)のために連絡を取ってくれる。教え子は沙端山(シャー・ルイシャン)。

9 宇宙の瞬き

汪淼(ワン・ミャオ)は京密路を通り密雲県、黒龍潭(こくりゅうたん)へ向かい山道を進み、中国科学院国家天文観測センターの電波天文観測基地(実際にはパラボラ28基は存在しないようです)へ向かった。
暗闇の中直径9mのパラボラアンテナ28基が一列に並んでおり、その先には直径50mのアンテナを擁する巨大な電波望遠鏡が2台ある。
沙端山(シャー・ルイシャン)博士の研究室では3つの衛星の観測データを受信していた。3つというのは1989年11月に打ち上げられた人工衛星COBE(コービー)、2001年に打ち上げられたWMAP(ウィルキンソン・マイクロ波異方性探査機衛星)、人工衛星プランク(Planck)(本文では記載がないが2009年5月打ち上げ)だった。

宇宙全体のマイクロ波背景放射の周波数スペクトルは温度が2.726Kの黒体放射と一致しており、全報告からほぼ等方的だが、100万分の1単位のわずかな温度の揺らぎが存在する。
(と書かれているがWikipdeidaだと2.725Kの黒体放射と一致と書かれている。この揺らぎはインフレーション理論においては量子揺らぎがインフレーションにより引き延ばされたもので、宇宙の初期ゆらぎそのものである。このゆらぎを測定することで宇宙の年齢や組成を測定できる。
申玉菲 (シェン・ユーフェイ)によれば5%の揺らぎが現れるという事で、ゆらぎを見たいと相談すると、マイクロ波背景放射は2.726±0.001KなのでCOBEで十分だといわれる。午前1時まで時間があったため、観光客向けの深夜営業のバーで2時間ほど過ごし、10分前に戻った。ラボに戻るとちょうど午前1時で、モニターにはちょうどゆらぎが始まったところだった。沙端山(シャー・ルイシャン)は恐怖をあらわにし、COBEの故障を疑ったが、WMAP、プランク人工衛星でも同様に揺らいでいた。慌てて沙端山(シャー・ルイシャン)はウルムチ電波観測基地に連絡を取ろうとしていた。汪淼(ワン・ミャオ)は波形をプリントアウトしてもらい、ピークとピークの間の長短をモールス符号に置き換えて調べた。
1108:21:37

1108:21:36

1108:21:35

カウントダウンは続いていた。92時間が経過し、残りは1108時間。
沙端山(シャー・ルイシャン)は破壊工作を疑う。首都天文館のために作ったおもちゃ、3K眼鏡での観測を提案する。これは探知した背景放射の波長を可視光に変換してみることができる。
沙端山(シャー・ルイシャン)に頼むと天文館で1時間後に貸してくれるという。車で向かうとたたき起こされた天文館のスタッフが3K眼鏡を貸してくれる。汪淼(ワン・ミャオ)は波打つ宇宙の光景に見惚れた。
天文館のスタッフが出てきて見終えたかと尋ねると、汪淼(ワン・ミャオ)は驚愕の表情を向けた。
申玉菲 (シェン・ユーフェイ)へ電話をし、カウントダウンが終わったらどうなるか尋ねたが、答えは「さあね」だった。
混乱してさまよった汪淼(ワン・ミャオ)は王府井(ワンフーイ、北京の繁華街)の天主堂(1904年に建てられたロマネスク様式のカトリック教会)前にいた。協会に入り泣いていると、史強(シー・チアン)隊長が声をかけてきた。

10 史強(シー・チアン)

史強(シー・チアン)は汪淼(ワン・ミャオ)の隣に座り、車のキーを差し出す。
(混乱した汪淼(ワン・ミャオ)は車を東単の交差点に止めていたらしいが、東単と言えば片側五車線くらいの道が交わっているので、普通であればあっという間にレッカー移動されただろう)

二人は史強(シー・チアン)の車(黒のフォルクスワーゲン・サンタナ)でレストランに入り、飯を食い、酒を飲んだ。
史強(シー・チアン)によれば、究極の法則は「不可思議な出来事にはかならず裏がある」(「三体」、32%)だという。

記憶を失うまで飲んだ汪淼(ワン・ミャオ)は自分の車の後部座席で目を覚ました。
場所は紫禁城の角のすぐ前。(東単からだと車で10分もかからないのでは?)

すぐに史強(シー・チアン)がやってくる。史強(シー・チアン)が言うには、最近は妙な出来事が起きているという。〈科学フロンティア〉の件もあり、環境保護団体の活動が活発化しており、対策映画は否かをテーマにしている、SF小説の新人賞はいちばんぞっとする未来を書いたやつが取っている。
「いま起きているこういうことすべてには、陰で糸を引いている黒幕がいる。目的はひとつ。科学研究を壊滅させることだ」(「三体」、32%)
軍の作戦司令センターは世界中に20数か所あり、NATOから北京に軍人が派遣されており、人民解放軍はペンタゴンで働いている者もいる。敵が何かが分からない状態だという。
ただ、敵は基礎科学を恐れていて、科学者への攻撃は基礎科学の研究者に限定されている。汪淼(ワン・ミャオ)は例外的に応用研究をやっているところが特別だという。
史強(シー・チアン)は汪淼(ワン・ミャオ)に仕事を進めろという、ゲーム『三体』も遊べという。電話をするから電源は常に入れておけという。

11 三体 墨子、烈火

汪淼(ワン・ミャオ)は史強(シー・チアン)と別れ帰路につく。途中、Vスーツを購入した。
妻からは職場の人間が一日中汪淼(ワン・ミャオ)を探していた、と言われる。電源を切っていた電話の電源を入れてナノテク研究センターに電話をして明日は出勤すると約束した。史強(シー・チアン)に言われた通り酒を飲んだが眠れず、再び『三体』にログインした。

紂王のピラミッドの前にいた。エジプト式からアステカ式に代わって鉄板が平らになっている。
墨子(ぼくし)と出合う。墨子が言うに、前回文明#137が滅んでログアウトしてから36万2000年経っており、文明は4回再起動したとのこと。文明#139は新記録で蒸気機関の発明まで行った。
前回の文明では、孔子が5年続く恒紀を予測したが、一ヶ月で乱紀がきて文明は滅び孔子も死に骸骨がなかった。
乱紀の始まりは太陽が突然消えて飛星現れて、寒さが訪れた。
墨子は世界を火の海に浮かぶ二重の球で、外殻の穴を通して内殻の外側に投射される光が太陽だと。内殻に穿たれた小さな穴が星。
各殻は収縮膨張を繰り返している。

汪淼(ワン・ミャオ)は墨子の説は不十分だと感じ、望遠鏡を使って太陽の観測をした。太陽は地球の太陽とは異なり中心に核が見える。墨子は恒紀が続くと予測していたが汪淼(ワン・ミャオ)は乱紀が来るという。
実際乱紀が来て全てが燃えて文明#141は灰燼に帰した。
翌日汪淼(ワン・ミャオ)はナノテクノロジー研究センターに出勤した。前日の無断欠勤で生じていた小さな混乱以外はいつも通りだった。仕事を終え、葉文潔(イエ・ウェンジエ)の家に向かった。汪淼(ワン・ミャオ)は伝説となっている紅岸基地での実験について話を振ると葉文潔(イエ・ウェンジエ)は紅岸基地のことを話始めた。
まだ機密扱いだが、すでに暴露するような本が出版されているようだ。

12 紅岸(二)

紅岸基地では、葉文潔(イエ・ウェンジエ)は最初送信部で設備のメンテナンスと検査・修理を担当していたが、すぐに技術畑の中核的な存在となった。これは、紅岸基地のプロジェクトは現状で運用が始まっており、大きな成果を上げる機会がなく、この辺鄙な場所の基地からいち早く移動したいと考えていたことが原因のようだった。
送信部のコンピュータシステムはDJS130(米Data General社が1969年に開発した草創期の16bitミニコンNOVAをもとにした中国製マシン)と比べてもさらに原始的な三台のマシンで構成されている。
基地の中、崖の上で雷志成(レイ・ジーチョン)政治委員と葉文潔(イエ・ウェンジエ)が話している。雷志成(レイ・ジーチョン)は葉文潔(イエ・ウェンジエ)のことを「葉さん」と呼んでいる。雷政治委員によれば、紅岸基地はただの電波送信機だが送信出力は25メガワットにも及ぶ。このエネルギーを使って、酒泉から打ち上げたターゲット衛星を攻撃し、電子レンジと同じ現象で摂氏千度に達し無効化することにも成功した。といった紅岸基地についての詳細を説明しているときに楊衛寧(ヤン・ウェイニン)が話に割り込んでくる。
楊衛寧(ヤン・ウェイニン)は、雷志成(レイ・ジーチョン)が紅岸基地の目的を葉文潔(イエ・ウェンジエ)に教えたのは独断専行であると考えているようだった。
雷志成(レイ・ジーチョン)が、業務のために必要なことだというと楊衛寧(ヤン・ウェイニン)は上に報告すると返してその場を去った。

翌日、葉文潔(イエ・ウェンジエ)は送信部から監視部へと異動になった。
監視部で葉文潔(イエ・ウェンジエ)は驚く。
キーボードを使って自由にコードの編集やデバッグを行える(葉文潔(イエ・ウェンジエ)が大学で並んだ当時だとプログラミング用紙に手書きして紙テープにして読ませていた)。さらに、言語もFORTRANを使っており、自然言語に近い言葉を使ってプログラミングすることができた。
雷志成(レイ・ジーチョン)は紅岸の監視システムは太陽フレアと黒点の活動で生じる電磁波の干渉を常に受けていて、葉文潔(イエ・ウェンジエ)の予測モデルが最も精度が高いことから力を借りたかったという。送信部に配属して監視部に異動させることで紅岸システム全体についての理解を深め、その後のポジションを検討していくというプランだった。
「葉さん、わたしの心からの願いは、いつか、君のことを葉文潔同志と呼ぶことだ」(「三体」39%)
と言われ、父が死んで以来はじめて泣いた。

日常の業務では楊衛寧(ヤン・ウェイニン)に厳しく指導され、不安を覚えるようになった。
ある時、監視システムが米国のKH-9偵察衛星が撮影した中国の写真を受信した。青島軍港や大三線重点軍工企業の工場など国内の重要な軍事目標が写っていた。KH-9の一号機は打ち上げられたばかりで、従来使われていたフィルム・カプセルではなくデジタル画像の無線送信のテストを行っていたのだ。
葉文潔(イエ・ウェンジエ)は非常に重要な監視対象だと考えたが、楊チーフ・エンジニアは三日目で監視対象から外した。葉文潔(イエ・ウェンジエ)には理解できない判断だった。ほかにも、何点か違和感のある判断に遭遇していた。
注:KH-9 HEXAGONは一般的にBig Birdと呼ばれ、1971年から1986年にかけて20基打ち上げられた(最後の1回は失敗)。重量は10トン少々で近地点高度100㎞、遠地点150㎞の楕円軌道に乗せた。撮影した写真は4基持つカプセルに入れて再突入させて回収した。低解像度のマッピングカメラを搭載する場合はカプセルは5基搭載した。

ある日、一人の士官に呼ばれ基地管理オフィスへ出頭させられた。そこには上級士官が集まっていた。雷志成(レイ・ジーチョン)が口を開く、自分はこの指示に同意していないこと、楊チーフ・エンジニアが上からの支持を受けて決定したものであること。楊衛寧(ヤン・ウェイニン)は上層部に何度も掛け合い、紅岸基地の本当の目的を葉文潔(イエ・ウェンジエ)に説明する許可を得たという。
説明を始める前に、最後に楊衛寧(ヤン・ウェイニン)が葉文潔(イエ・ウェンジエ)に尋ねる。「今ならまだ間に合う。真実を知りたくなければ、それでもいいんだぞ」(「三体」39%)と。
紅岸の真実を知れば、レーダー峰を出る望みも絶たれることなのだが良いのかと尋ねている。
葉文潔(イエ・ウェンジエ)は
『「真実を知ることに同意します」文潔はさらりと、だが堅い意思をもって答えた。』(「三体」39%)

13 紅岸(三)

紅岸プロジェクト関連文書の抜粋。葉文潔(イエ・ウェンジエ)が汪淼(ワン・ミャオ)に紅岸の内幕を語った三年後に機密指定を解除されている。
1点目は196*年*月*日の『内部資料』からの抜粋の体で書かれている。
科学の基礎理論の研究成果が実用的な技術へと転化されるモードには「漸進型」(例:航空宇宙技術の発展)と「突然変異型」(例:核兵器)の二つがある。
この突然変異的に進むことを技術跳躍(テクノロジー・リープ)と呼ぶ。この技術跳躍が期待される分野は物理学、生物学、コンピュータ化学、地球外知的生命体の探査(SETI)で、その中でもSETIが最も大きな跳躍がありうる。

2点目は196*年*月*日の「地球外知的生命体探査に起因する技術跳躍の可能性に関する研究レポート」の体。
国際的な動向(米国オズマ計画(1960年)、オズマ計画II(1972年)ボイジャー1号2号(1977年)、アレシボ天文台(1963年、プエルトリコ、直径305メートル、面積8ヘクタールの電波望遠鏡)、ソビエトについては情報が少ないがどちらかというと社会・政治学的な検討について記載されている。

3点目は「紅岸プロジェクト初期フェイズ研究報告」(196*年*月*日)で、最高機密である。
目的としては地球外文明の探査と関係の構築・交流が挙げられている。
送信するメッセージは相対性理論前までの知識でわかるレベルで、天の川銀河の場所は明確には含まない。

14 紅岸(四)

ランド研究所の社会学者ビル・マザーズが『十万光年の鉄のカーテン SETI社会学』にて主張した「象徴としてのコンタクト理論」。

コンタクトの内容がどういったものであれ、そのインパクトは文明の進歩に甚大な影響を与え、しかも一つの国家や政体によりコンタクトが独占されれば、経済及び軍事で圧倒的なアドバンテージを得ることに比肩する重要性を持つとされている。

汪淼(ワン・ミャオ)は紅岸プロジェクトが失敗したと考えて葉文潔(イエ・ウェンジエ)を慰めるように話した。

ソ連の天文物理学者カルダシェフが提起した説によると、通信に使えるエネルギーによって宇宙の中の様々な文明は三つのタイプに分類できる。

I型は地球の全エネルギーに相当する量が使える。10の15乗から16乗ワット。

II型は一般的な構成一つに相当する10の26乗ワットを使える。

III型の文明は銀が一つの全エネルギーに相当する10の36乗ワットを使用できる。

現在の地球の文明はI型にも満たない0.7倍程度、紅岸では地球全体の1000万分の1に過ぎなかった。

葉文潔(イエ・ウェンジエ)は「わたしたちの呼び声は、一万里先にいる蚊の羽音くらいのものよ。だれにも聞こえない」と語る。

80年代に紅岸基地はアップグレードがされた。監視システムにはIBMの中型コンピュータが導入され、送信システムは自動化された。その後徐々に衰退した。基地警備の兵力が中隊規模から小隊規模に縮小され、最終的には5人の警備員1グループだけになった。

第二砲兵所属のまま、科学研究に関する管理は中国科学院天文所に移設されて、SETIとは別の研究も一部行うようになった。

紅岸の所属が軍から民間に代わり、軍は完全に放棄した。中国科学院は基地の運営費用を負担しきれなくなって解散した。

基地に入って四年目(1969年の冬に基地に入ったので結婚は1973年ころであろう)、葉文潔(イエ・ウェンジエ)は楊衛寧(ヤン・ウェイニン)と家庭を持った。その後基地内で事故が起き、楊衛寧(ヤン・ウェイニン)と雷志成(レイ・ジーチョン)はともに命を落とした。そのあとに葉文潔(イエ・ウェンジエ)は楊冬(ヤン・ドン)を生んだ。

基地の解体に伴い葉文潔(イエ・ウェンジエ)は紅岸基地を離れ、母校で天文物理学の教授となり定年まで教鞭をとった。

という事を汪淼(ワン・ミャオ)は沙端山(シャー・ルイシャン)から聞いていた。

15 三体 コペルニクス、宇宙ラグビー、三太陽の日

葉文潔(イエ・ウェンジエ)の家を出て、汪淼(ワン・ミャオ)の心は落ち着かず、この二日間の出来事と紅岸基地の物語が結びついて世界の見え方が変わってしまったように思えていた。
帰宅して、もやもやした気分を変えようと『三体』に入った。三度目だ。
新しいアカウントを作成した。コペルニクス。

ログインすると、そこにはまたピラミッドがあった。
ピラミッドは、ゴシック式の塔頂があり、夜明けの空に向かってそそり立っていた。
街並みもすべてヨーロッパ風に変わっていた。
汪淼(ワン・ミャオ)は、IDをコペルニクスにしたので『三体』がそれに合わせた舞台設定にしたのだろう、と推察した。
ピラミッドにはいり、トンネルを進むと部屋があった。大理石のテーブルに銀の燭台。数人の人がおや、金の冠を頭にいだく背の高い痩身の人物が降おローマ教皇グレゴリウス一世と名乗る。
古代ギリシャのトーガ姿の人物がアリストテレスと名乗る。山羊髭の人物が現れ、ガリレオだと名乗る。
汪淼(ワン・ミャオ)は問題となっているのは三体問題であること、3つの太陽がそうと認識されないのはある程度遠ざかった太陽はコア以外が突然見えなくなるため、不連続的に飛星になっている。三体惑星が一つの恒星の周りを回っているとき恒紀となり、恒星の間で不安定に彷徨う時、乱紀になっている。
当然主人公が気づいたので真実なのだが、皆信じず、グレゴリウス一世は死刑を言い渡す。
三つの太陽が出た記録がないと言われて、コペルニクスは3つの太陽が太陽が登れば文明は数秒で滅ぶからだと主張した。
コペルニクスがまさに磔にされようというときに騎士が駆け込んできて「世界がたったいま滅亡した!」と叫び絶命した。
文明#183は三個の太陽により滅ぶが、ゲーム上のメッセージはコペルニクスが宇宙の基本構造を示しすことに成功したことで『三体』のゲームはレベル22到達したことを示した。

16 三体問題

汪淼(ワン・ミャオ)がゲームからログアウトするとすぐに史強(シー・チアン)から電話があり公安分局へ呼び出された。午前三時。

そこには情報保安課の徐冰冰(シュー・ビンビン)(じょ・ひょうひょう)と魏成(ウェイ・チョン)がいた。

魏成は自分の命が狙わられていることと、その経緯を説明した。

魏成には数学の才能があった。数字は脳内で立体として捉えられ、直感的に答えが出せた。数学オリンピックに出ることを進められ、出たら優勝した。一流大学の数学科に招かれ、博士課程まで出たが、大学の講師として働き出すとまるで向いてなく、まっさきにクビになった。

父の友人の、南方の山寺の僧侶のところに行った。僧侶に尋ねた。「残りの人生をやりすごすための、穏やかで安楽な道を見つけたいんです」。

答えは心を空にしなくてはならないという。「空は無ではない。空は存在の一種だ。そなたは、空をもってみずからを満たす必要がある」

それ以降、魏成は眠れなくなった。宇宙に一つの球をおいた。全く動かない、死のようなものだった。もう一つ球を置き、初速をつけると相互にぶつからない場合何らかの安定状態になる。まるで変わらず同じ死の舞踏。更に一つ球を置く無限に変化する状態が得られた。これが魏成にとっての空だった。

三つの球のことを考え続け、モンテカルロ法のように繰り返しテストを行い、どのベクトルの組み合わせが良いか、悪いかを判定し、良いものを残していくことで三体の次の配置を予測できるのではないかと考えた。
「進化的アルゴリズムか」と汪淼(ワン・ミャオ)は言った。

魏成(ウェイ・チョン)のところに観光客として日本のツアー客のグループと一緒に来ていた申玉菲 (シェン・ユーフェイ)と出会い三体問題について会話をする。申玉菲 (シェン・ユーフェイ)に一緒に来て「主」を救るのを手伝うよう誘われたが、僧侶は一緒に行かないよう忠告した。僧侶はその「主」が実在であるのではないかと考えたのだった。
魏成(ウェイ・チョン)は結局ついていった。一台のミニコンピュータをもらい、海外のスーパーコンピュータも使わせてもらった。
きょういてきなことに魏成(ウェイ・チョン)はすでに百以上の安定的配置を見つけていたが、ある時事件が起きて穏やかな生活は終わってしまった。
匿名の電話で、三体問題の研究を止めなければ殺されるだろうと告げた。その夜、半覚醒状態のところに申玉菲 (シェン・ユーフェイ)がベッドの脇に立っていた。銃を持って、三体問題の研究は続けろ、続けなければ殺すといった。より正確には

『もし三体問題を解くことに成功したら、あなたは救世主になる。でも、いまやめたら罪人になる。もし誰かが人類を救うか、滅ぼすとしたら、あなたの貢献もしくは罪の大きさは、そのだれかのちょうど二倍になる』(「三体」48%)

といった。
汪淼(ワン・ミャオ)は
「この話も妙だな。どうしてちょうど二倍なんだろう?」(「三体」48%)と返した。

徐冰冰(シュー・ビンビン)、汪淼(ワン・ミャオ)、史強(シー・チアン)、魏成(ウェイ・チョン)と二人の刑事で現場に向かうこととなった。
徐冰冰(シュー・ビンビン)は『三体』のモニタリングを仕事としている。汪淼(ワン・ミャオ)の名前は「三体』の中で大評判だという。汪淼(ワン・ミャオ)は『三体』のバックグラウンドを尋ねる。
徐冰冰(シュー・ビンビン)は『三体』のサーバが国外にあり堅牢に守られていること、開発に参加した人間は世界中にいること、非常に高度な開発用ツールが使われていると語る。

まだ空が明るむ前に申玉菲 (シェン・ユーフェイ)の家に着く。ドタバタと音がして中に踏み込むと申玉菲 (シェン・ユーフェイ)が死んでいた。近くに銃が落ちており、黒のフォルクスワーゲン・サンタナが走り逃げるのを見る。
魏成は昨日申玉菲 (シェン・ユーフェイ)と環境保護主義者の潘寒(ファン・ハン)が口論したという。潘寒(ファン・ハン)は降臨派、申玉菲 (シェン・ユーフェイ)は救済派で、総帥はどちら側なのか、という話をしていた。

魏成は三体問題を解く進化的アルゴリズムのモデル一式をに渡す。汪淼の名で発表してくれという。

17 三体 ニュートン、ジョン・フォン・ノイマン、始皇帝、三恒星直列

汪淼が『三体』レベル2にログインするとまたピラミッドがあった。麓ではアイザック・ニュートンライプニッツが決闘をしている。
ライプニッツが逃げたあと、汪淼とニュートンの公論に割って入ったのはジョン・フォン・ノイマンだった。
フォン・ノイマンは構成の運行を予測するために秦の始皇帝(嬴政(えいせい))から三千万人の兵隊を借りて計算を行わせることを考えてやってきた。
フォン・ノイマンはユーザが操っており、しかもそのユーザーはおそらく中国人だ、と汪淼は推測した。
フォン・ノイマンは始皇帝に人間に旗を持たせて手旗でAND回路、OR、NANDなどの回路を組ませた。三ヶ月後、始皇帝の三千万の兵士が並び、回路を形成した。一辺は6キロメートルの正方形で、兵士たちは号令を受けて回路として働く。フォン・ノイマンはこの計算陣形(コンピュータ)を「秦一号」と命名した。CPUには最精鋭5兵団を構成している。加算器・レジスタ・スタックメモリなどが構成されている。外側を囲んでいるのがメモリで、多くの色の旗を持たせて当初20名に割り当てていた動作を一人で実行できるようにしてメモリ容量が〈新1・0〉オペレーティングシステムの最低条件をクリアした。
陣形を貫く無人の通路と、身軽な軽騎兵がシステムバス。コンポーネント間の情報伝達を担当する。

望遠鏡で見るほど遠くに外部メモリがある。コペルニクスの提案に従ってハードディスクと呼んでいる。教育水準の高いもの300万人で構成されており、筆記具とメモで計算結果の記録を担当している。仮想メモリとして計算の中間結果を記憶することが最大の役割で、計算速度のボトルネックとなる。
一番近い場所がディスプレイ。重要なパラメータをリアルタイムで表示できる。

巨大な巻物を広げると、〈秦1・0〉オペレーティングシステムだと説明する。次いで同じような巻物で、数値解析法を用いて微分方程式の解を求めるためのソフトウェア。
これから2年間の三つの太陽の位置を完全に予測できる。出力の時間間隔は120時間(5日ごとの各太陽の場所が出力される)。

コンピュータ(計算陣形)の起動と自己診断で10分。次いで、起動手順(シークエンス)開始、オペレーティングシステム読み込み(ロード)。

システムがフリーズする。

CPUステータス・レジスタのゲートの一つにエラーが発生。フォンノイマンはシステムを再移動しようとしたが、ニュートンが止め、故障率の高いコンポーネントにはメンテナンスが必要だと始皇帝に提案する。
始皇帝は故障したコンポーネントの交換を指示する。ゲートを構成していた兵士は全員首を刎ねられる。

「鞘から剣を抜いた騎兵の一隊がマザーボードに突入し、故障個所のメンテナンスを始めていた。」

再度起動を開始して20分でOSが起動完了。

太陽軌道計算プログラム『Three Body 1.0』起動を始める。

陣列コンピュータは1年4か月にわたって作動を続け、メンテナンス期間を除いて1年2か月。その間乱期で2度中断をはさんだがいずれの場合も復帰に成功。
計算結果は長い恒期を予言したが、天文台人が駆け込んでくる。計算に間違いがあり、三恒星直列が起こっていると述べる。
ニュートンは三つの太陽が始皇帝の周りを回っており吉兆だとおべんちゃらを言って素早く馬を盗んで逃げだす。
少しして、汪淼(ワン・ミャオ)が始皇帝に剣を抜いてみてくださいと言う。
剣を抜くと、非常に軽く感じると述べる。にわかにすべての人・モノが三恒星の重力を合わせた力で宙に浮き文明は滅ぶ。

文明#184は科学革命と産業革命レベルまで到達した。

ニュートンが非相対論的古典力学を確立。微積分とフォン・ノイマン型コンピュータで三体運動に対する定量的数学解析の基礎が築かれた。

汪淼(ワン・ミャオ)がゲームからログアウトしたとき、ちょうど見ず知らずの人物から電話がかかってきた。
ひどくしゃがれた男の声。

ゲーム『三体』の管理者だと名乗り、年齢・学歴・勤務先・肩書きを聞いてくる。答えないとゲームにログインさせないという。汪淼(ワン・ミャオ)は正直に答える。明晩オフ会がある載せぜひ参加してくださいと言った。

18 オフ会

オフ会は辺鄙なところにある静かで小さな喫茶店で行われた。西城区の雲河珈琲館。
参加者は七人。
汪淼。
60か70代の年配男性。凝った細工のパイプで刻みタバコを吸う。
白髪。血色が良い。現代科学に東洋哲学の思想を吹き込んだ学者。
奇抜な服を着た女性作家。
中年男性。国内最大のソフトウェア会社の副社長。カジュアルな服装。

中年男性。国営電力会社の役員。

若者。国内大手メディアの記者。

理系の博士課程に在学中。

そして幹事は環境活動家の潘寒(ファン・ハン)。

汪淼は史強にメッセージを送るも、すでに場所はわかっていた。
史強は汪淼に熱狂的な『三体(ゲーム)』信者のふりをしろという。
潘寒は三体世界(三太陽世界(トライソラリス)は実在するという。

人力コンピュータの荒唐無稽さの話になった時、潘寒は三千万の兵士一人一人が1秒に10万回振れて、軽騎兵が音速の数倍で動けたらどうだろうかという。三体人は極端な日照に耐えるために全身が鏡面で覆われていると。

次にゲーム三体の目的の話となる。潘寒は同志を集めることだという。次いで、三体文明が人類社会を侵略したらどう思うかと問う。
侵略者を悪と捉えたのは副社長と国営電力役員氏。他は肯定的。
汪淼も潘寒にどちらの立場かを問われ、記者と哲学者の方(イコール三体星人による侵略を肯定的に捉える側)を選ぶ。
副社長と国営電力役員はIDを抹消され返される。

潘寒は残った五人の一人一人と握手をし、同志と呼んだ。

19 三体 アインシュタイン、単振り子、大断裂

汪淼の5回目のログイン。国連本部ビルが立ち回りは高層ビルが林立している。老人となったアインシュタインが街角でヴァイオリンでモーツァルトを弾いている。

巨大な月が昇る。たくさんの人がいる。国連事務総長もいる。汪淼は魏成の進化的アルゴリズムを渡すが、すでにそれよりも良いアルゴリズムが開発されていると言われる。
皆、どこか暗い。巨大な単振り子が聳えている。
「すでに決定的に証明された。三体問題に解は存在しない」(三体 58%)
と事務総長は言った。単振り子はだから記念碑であり墓碑なのだと言う。
文明#191は大断裂により滅びた。

まず“飛星静止”が起きた。これは、遠い太陽が背景の星野に対して静止することで、三つの可能性がある。

一つ目は太陽と惑星が同じ速度で同一方向に動いている。

二つ目は太陽と惑星が互いに遠ざかっている。

三つ目は、太陽と惑星が衝突しようとしている。

三つ目は実際に起きたことはなかった。

が、文明#191ではそれが起き、激突はしなかったがロシュ限界を超えて三体世界を掠め、惑星は分裂した。
分裂した惑星は最初溶岩流でつながり、冷えた溶岩はリングになったがやがてリングを構成していた巨大な岩石は惑星に長年にわたって落ち続けた。
文明#192は九千万年かけて情報化時代まで来たが、過去にこの星系には惑星が12あったことがわかった。11はすでに三つの太陽に飲み込まれていた。3つの恒星は呼吸と呼ばれる、膨張と収縮を繰り返していた。
単振り子が起動する。
テキストが現れた。
451年後に文明#192は双子の太陽に焼かれて滅亡した。
原子力及び情報化時代に到達。三体問題に解がないことを証明した点がマイルストーンとなった。

三体のゴールは変わった。星々を目指し、新たな故郷を探すことになる。

疲れ切った汪淼はログアウトした。疲れ切っていた。
30分ごに再度ログインすると、緊急事態のため間も無くシャットダウンするとのメッセージが表示出された。
残された時間中にログインしてくださいとある。

20 三体 遠征

汪淼が三体にログインすると、三つの文明が過ぎていた。
大勢の人が集まり、さらには方形に星が並ぶ。
三体艦隊で、高速の10%の速度で四光年先の星に向かうべく出発するのだった。

ゲーム三体が終了したと言うアナウンスが出る。

約束に今も忠実であれば地球三体協会へ参加するよう呼びかけている。

第三部 人類の落日

21 地球反乱軍

廃止された工場のカフェテリアでオフ会が開かれている。
参加者は三百人以上。汪淼が知る社会的に有名な人物が多くいる。
カフェテリアの真ん中には3つの銀色の球体が台座の上で浮かびくるくる回転するオブジェが置かれている。

環境局を率いる藩寒が降臨派の申玉菲を殺したことを詰問される。一斉に蜂起すべきだなどという意見まで出て紛糾しているところに地球三体協会の総帥、葉文潔(イエ・ウェンジエ)が現れる。
潘寒は、エヴァンズ同志の同意のもと数学者魏成を排除するために訪ねていったところ申玉菲に先に撃たれたので反撃しただけだと弁明する。
潘寒は葉文潔に降臨派なのかと問う。
葉文潔は潘寒に降臨派の綱領を問う。

「「人類社会はもはや自分の力では問題を解決することができず、自分の力でその狂気を律することもできない。それゆえわれわれは、主がこの世界に来たり、その力によって人類社会を強制的に監督し、矯正し、まったく新しい、正しく善なる人類文明を創造することを願う」」
—『三体』劉 慈欣著
https://a.co/591mJ87

ラファエルという降臨派のイスラエル人が出てくる。
ラファエルの息子は14歳で交通事故に遭い、おそらく亡くなっていて、肝臓をパレスチナ人の少女に移植した。だが、いまだにユダヤ人とパレスチナ人は争っていることに絶望しETOに参加した。
降臨派はエヴァンスにより歪められており、真の綱領が他にあるという。降臨派の真の綱領はこうだ。

「『人類は邪悪な種である。人類文明は地球に対して許しがたい罪を犯してきた。降臨派の最終目標は、主によって罰を与えてもらうこと、すなわち全人類の滅亡である』」
—『三体』劉 慈欣著

葉文潔は、降臨派は自らが作った第二紅岸基地を使って得たメッセージをほとんどETO内に知らせておらず、知らせているものも改竄していると言う。
更に多数のメッセージも送信していると。
申玉菲は降臨派にいたが考えは救済派で、この降臨派の裏切りを告発しようとしていたのでエヴァンスは二人を抹殺しようと考えた。

追い詰められた潘寒は銃を抜こうしたが、葉文潔のボディガードの少女に一瞬で首を折られて死ぬ。

22 紅岸(五)

葉文潔は紅岸基地で働いていた。アンテナは予定より縮小され、送受信両用のものが一つ。
受信は太陽の騒擾を受けて使える時間帯は更に狭かった。葉文潔はこの影響を取り除くことができないか研究を続けていたが、実際には取り除かないものとして結論していた。ただ、この研究が続いているがために外部の最新の情報が入手できると言う特典があったため、結論するのを先送りしていた。論文は雷志成の名前で発表しており、雷志成は科学的な研究能力と政治的な熱狂を併せ持つ人物として大いに評価されていた。

葉文潔は、太陽表面の変化がないにもかかわらず騒擾を受ける場合があることについて解明ができないでいたが、ある時海外のジャーナルを読んでいて木製表面のバーストがあったことを知った。その発生時間と紅岸基地での観測結果から、太陽が鏡面のように働くことを突き止める。この鏡面では太陽内部から外部へ向かうガンマ線のエネルギーが非連続に落ちるとともに、外部からの特定の周波数かつ一定以上の電波を一億倍にも増強して反射していた。

紅岸基地の送信能力はこの閾値を超えているので、太陽をスーパーアンテナとして人類はカルダシェフの分類におけるII型文明に相当する出力で通信が行えると言うことだった。
木星の電磁波バーストの波形をハリー・ピータースンをもらえるよう依頼したが政治的な問題で遅々として進まない。並行して、実際に反射、増幅が行えるか実験を進めようとした。ただし、あまりに空想的な仮説だったのでそのまま説明して許可を得ることはせず、調査のために電波を送信して反射波を調べるためだとした。

雷志成は赤い太陽に対して電磁波を打ち込むことについて政治的な問題があることを指摘し、了解しなかった。
葉文潔は諦めなかった。紅岸基地のアンテナの機械的信頼性は低く15回の送信実験毎にオーバーホールが必要だった。
1971年の秋、そのようなオーバーホールの後の動作テストの時に人が少ないタイミングで密かに太陽に向けて送信を行った。
最大出力で、しかも太陽に向けてテストを行うのは普通のことではない。葉文潔は緊張で汗ぐっしょりになりながら送信を終えると楊衛寧のオフィスに飛び込むと基地の無線機で受信するよう伝えた。
楊衛寧は驚き、二度とやるなと言いつつ受信を行った。
が、結果は反射はなかった。
ハリー・ピータースンからの返事もきたが、紅岸基地で太陽から観測した雑音とは一致しなかった。
葉文潔は落胆した。

しかしこの時、実は太陽で反射された強力な電磁波はひろがりつづけていた。

23 紅岸(六)

8年が過ぎた。(ということは1979年だろう)

紅岸基地の周りは一面伐採が進んだ。
1973年ころに楊衛寧と結婚したが、その際に、妻が反動的疑いとのことで楊衛寧はチーフからヒラのエンジニアとなった。
ある日の午前0時、返事が来た。
こちらの送ったのと同じ言語だった。
「返信するな!返信するな!!返信するな!!!」
と三度繰り返されていた。その後、4時間にわたって三体世界の情報が送られてきた。滅亡を繰り返し、他の星は移住を試みている。
「わたしが太陽に向かってメッセージを送信してから、まだ九年も経っていない。ということは、この情報の発信源は、地球から四光年くらいしか離れていないことになる。だとすれば、可能性はひとつしかない。太陽系にもっとも近い恒星系──三重星系として知られるケンタウルス座アルファ星系だ。」
—『三体』劉 慈欣著
太陽が反射しなかったと誤認した原因は、反射の際に正弦波が加えられることが原因だった。
葉文潔は受信データを昔の受信データで上書きして受信管制室を出た。
その足で送信管制室を訪れ、送信機器のウォームアップのふりをして返信をした。
「来て!  この世界の征服に手を貸してあげる。わたしたちの文明は、もう自分で自分の問題を解決できない。だから、あなたたちの力に介入してもらう必要がある。」
—『三体』劉 慈欣著

24 反乱

葉文潔が話し終えた。汪淼(ワン・ミャオ)がどのようにして三体協会を発展させたかを質問した。
それはエヴァンスとの出合いから説明しなあと行けないからいつかまた、と打ち切られる。
逆に、汪淼(ワン・ミャオ)のナノマテリアルの話をしたいという。
汪淼(ワン・ミャオ)はなぜあなたの言う"主"ナノマテリアルを気にするのか、軌道エレベーターが開発されるのを恐れているのかと質問すると、そうだという。
地球近傍の宇宙空間を開発して大規模な防御システムを開発されないようなナノマテリアル技術の進歩を止めているのだという。

その時、史強が率いた兵士がなだれ込んできた。史強はいきなり手近の三体協会員を殴り倒す。拳銃を抜こうとしていたらしい。汪淼(ワン・ミャオ)は兵士に安全地帯に引き離される。
藩寒の首を折った少女が三体協会員二人を連れてオブジェに駆け寄ると3つの金属球を一つずつ抱えた。

なんとそれはそれぞれ1.5キロトンの核爆弾だという。
史強は爆発物処理担当に確認させる。
鉄球をばねばかりに乗せると2つまでは軽すぎて核爆弾ではないとわかる。
最後の、少女の鉄球は極端に重い。
爆発物処理官は「すくなくとも、重元素がーー核分裂物質がーーあの中にはいっているのはたしかだ」という。
(随分雑な爆発物処理官ですね……)
爆発物処理班は核爆弾を撃てという。撃てば周囲の爆薬は爆発するが核反応は起こらないという。
(これはそうなのでしょうね。核反応を起こすには核物質の周りに配置した爆薬を連続的に発火させて極端な高圧にする必要があって、非常に制御が難しいとのことなので)
狙撃手が配置につけるか問われると史強は、少女はカンが鋭いから無理だという。

史強は少女の母親が見つかったと嘘を付き、三体教会のメンバーが史強の持つ封筒を受け取ろうとして前に出たときにその影で銃を抜き核爆弾を撃った。
爆発により少女は肉塊になり、続いて起きた銃撃戦で数十人が死んだ。
残った葉文潔を含む2百人ほどの三体協会のメンバーは捕縛された。
史強は、目の前に来ていた三体協会の男が盾となり軽傷で済んだ。

この攻撃を三体文明が警告をしなかったことで見捨てられたと感じ、救済派が瓦解した。

25 雷志成、楊衛寧の死

尋問の調書のような様式。

1979年10月21日、雷志成が葉文潔を呼び出す。
雷志成は送受信用のデータ領域を監視しており、葉文潔が異星人からのメッセージを受信し、消したことを知っていた。
その一方で、葉文潔が返信する時に通常と異なる手段で送信したため、雷志成は気づいていなかった。
雷志成はこのことをもみ消す代わりに、
返信をしないこと。楊衛寧を含む他人に言わないこと。の二点を要求した。葉文潔は言われた通りにすると請け合った。
雷志成は異星人からのメッセージを受け取った最初の人間になりたいのだった。

葉文潔はすぐに決意した。
基地全体のアース線の固定ボルトを緩めた。
紅岸基地は立地が特殊なために、アース線の先端は岩壁に垂らされて、その先で埋められていた。
(基地の下の粘土層は導電性が低くアース線を深く埋める必要があり、深く埋めると線が腐食してすぐに役に立たなくなるとのことですが、さすがに特殊過ぎではないでしょうか)
葉文潔以外はアース線の先端の埋設がおかしくなったと考えた。アース線の元は固定ボルトで固定されており問題になったことがないからだ。
誰かが命綱をつけて岩壁を降り断崖絶壁に埋め込んであるアース線の先端を埋め直さなくてはならない。

こう言った場合に雷志成は先頭になって行うのを知っていて罠にかけたのだ。
雷志成が降りていくと、葉文潔は適当な理由をつけて他の人間を追い払った。
そこに楊衛寧が来た。降りて手伝うと言うがロープは雷志成が使っている一本しかない。楊衛寧は二人降りても問題はないので降りると言うが、葉文潔は予備のロープを取りに行く。
葉文潔が戻った時には楊衛寧は既に雷志成のロープを降りていた。

葉文潔はロープを切り、二人を殺した。

26 だれも懺悔しない

雷志成と楊衛寧の死は不慮の事故として処理された。
警備レベルが下がり、地元の人が訪れるようになった。
斉家屯(せいかむら)の十五、六歳の子供たちが訪れた。
古い綿入れ、犬皮の帽子。
中学の物理の教科書を持って高考(普通高等学校招生全国統一考試)のための勉強をしているとのこと。
葉文潔は教えてやる。
三日後は七人、三回目は十五人に増え、鎮(まち)の中学の教師まで来た。

1979年の旧暦大晦日(1979年10月21日に二人を殺害しているので、これはおそらく1980年2月15日=旧暦12月29日の事だろう)。静まり返った基地(中国では旧暦の正月、春節を一族で祝うため皆帰省するため)で仕事を終えて部屋に帰る。遠くでなる爆竹。地盤が消えてしまいそうに感じていた。
吹き荒ぶ風のなか子供たちが来て酸菜と豚肉入りの水餃子を届けてくれた。

その年、太陽に信号を送信した八か月後、葉文潔(イエ・ウェンジエ)は産気づいていた。胎位が正常ではなく鎮(まち)の病院へ搬送された。2リットルも出血があったが、斉家屯の何十人もの農民が献血してくれた。
出産後、ひどく体が弱っていたことから基地で過ごすことは難しく、斉家屯の斉猟師夫婦が家に引き取ってくれた。夫婦には息子と娘が二人ずつ板田、息子の片方は兵士になって村を離れており、もう一人の息子は結婚後も実家で暮らし、その嫁はつい最近出産したばかりだった。
葉文潔(イエ・ウェンジエ)はこの大興安嶺の農家に半年以上住んだ。楊冬(ヤン・ドン)は村のいろいろな女たちの乳で育てられることになった。一番多く乳を飲まさせてくれたのは、斉猟師の息子の嫁、大鳳(ダーフォン)だった。

村人たちは粗野だが葉文潔(イエ・ウェンジエ)を尊敬しており、その前ではずいぶん礼儀正しかった。この村での粗野だが素朴な人々との暮らしは葉文潔(イエ・ウェンジエ)の心を慰めた。

半年過ごした斉家屯を離れ、楊冬(ヤン・ドン)を連れて紅岸基地に戻って二年が過ぎ(1982年か?)て、葉文潔(イエ・ウェンジエ)とその父について政治的な名誉回復がなされたという連絡が来た。
ほどなくして出身大学(清華大学)から教壇に立ってほしいと連絡がきた。手紙には父親の未払いの給与の振り込み通知が同封されていた。
子供の事考え、大学に戻った。世間は文革の厳しい冬の時代が終わりって回復に向かう最中だった。
第一回全国化学大会(1978年に人民大会堂で6000名の参加者を集めて開催された)では中国科学院の初代院長である郭沫若(グオ・モールオ)が科学の春の到来を宣言した。
三体世界からの通信はなかった。

しばらくたって、葉文潔(イエ・ウェンジエ)は楊冬(ヤン・ドン)を連れて紹琳を訪ねた。夫の死後、心神耗弱状態から立ち直り、復課鬧革命(ふっかとうかくめい)に関する通知(1967年10月に出された授業再開と復学を促す通知)で教団に戻った。そのあと、迫害を受けていた教育部の高級幹部と再婚した。紹琳の夫はすぐに副大臣へと昇格した。これを足掛かりに別の有名大学の学長へと上り詰めた。
まるで普通の家族のように迎えられ、返されるときに紹琳の夫が紹琳のメッセージを伝えた。内容は、葉哲泰(イエ・ジョータイ)の死の責任は紹琳にはなく、追及することはしないように、とのことだった。
葉文潔(イエ・ウェンジエ)は二度と紹琳の家を訪れなかった。

葉文潔(イエ・ウェンジエ)は葉哲泰(イエ・ジョータイ)を殺害した四人の紅衛兵の行方を追い、三人と会うことができた。葉文潔(イエ・ウェンジエ)は紅岸基地で太陽に向けてメッセージを送信したときに復讐したいという気持ちは満足していたが、懺悔を聞きたいと考えていた。
女たちは語った、四人は精華大学付属高校の張り紙に署名をし(これが紅衛兵の始まりとされているらしい)、大検閲、大串連、大武闘、一司、二司、三司、聯動、西糾、東糾、新北大公社、紅旗戦闘隊、東方紅、と紅衛兵の最初から最後まで参加していた。清華キャンパスの百日大武闘で一人は片腕をキャタピラに押しつぶされて隻腕になった。15歳だった。
そのあと四人とも田舎の貧しい農場に送られ現実を知った。誰も助けてはくれなかった。今日来なかった一人は、葉哲泰(イエ・ジョータイ)に最後の一撃を加えた唐紅静(タン・ホンジン)だった。洪水でさらわれた羊を助けるよう黄河へ飛び込んでおぼれて死んだ。
ようやく北京に戻ったが、最底辺の仕事すらなかった。

片腕の女は、『楓』という映画の話をした。
映画の最後に、紅衛兵の墓の前で一人の大人が子供に問われる、英雄だったのか?敵だったのか?どちらも違うと答えると、再度「ではなんだったのか?」と問われて「歴史だ」と答える。片腕の女は興奮して、今や新しい時代となり、自分たち紅衛兵のことは誰も思い出してはくれないと述べた。
葉文潔(イエ・ウェンジエ)は社会に対して芽生えたわずかな希望さえも消えた。
(復讐に燃えて三体文明へメッセージを送り、子供を産み、斉家屯での暮らしで人に対する信頼を回復しつつあったが、父葉哲泰(イエ・ジョータイ)の命を奪った母親紹琳と四人の紅衛兵の反省しない姿を見て人類に対する希望を失った、という事かと思います)

27 エヴァンズ

大学に戻って半年後(1983年か?)、葉文潔(イエ・ウェンジエ)は大規模な電波天文観測基地の設計プロジェクトを担当することになった。
候補地の一つで、白求恩(ベチューン)と呼ばれる外国人と出会う。この名は1938年~1939年に延安で医療活動に従事したカナダ出身の外科医のもので、周りの村人にはそう呼ばれているがマイク・エヴァンズと名乗った。大量の本の中にピーター・シンガーの『動物の解放』があった。
エヴァンズは北西褐色ツバメの亜種を救うために樹林を再生しようと努力していた。
エヴァンズの父親は多国籍石油企業のCEOだった。父親は石油で便利になることが重要で、他のものは重要ではないと教えたがエヴァンズは違う考えに至った。
自ら発明した種の共産主義に従っており、その基本綱領は『すべての生命は平等』というものだった。
結局その場は貧しすぎて許可が下りなかった。トラブルが生じるからだ。

三年後(1986年か?)、エヴァンズから手紙が来た。この先どうしたら良いか教えてほしいという内容だった。
葉文潔(イエ・ウェンジエ)が訪れると、エヴァンズの森は伐採されていた。近隣の二つの村が競い合って伐採を進めている。
エヴァンズは45億ドルの遺産を手に入れたが、文明が発展する限り、このツバメのような種は救うことはできないという結論に至っていた。人類は自分の力で矯正することはできないと。
葉文潔(イエ・ウェンジエ)は、紅岸基地と三体世界のことをすべて伝えた。
エヴァンズは葉文潔(イエ・ウェンジエ)に手を差し伸べて「われわれは同志だ」と述べた。

28 第二紅岸基地

さらに三年(1989年か?)が過ぎた。
その年の冬、西ヨーロッパの大学から急な将兵を受けて客員研究員として半年ほど滞在することになった。ロンドンのヒースロー空港からヘリコプターに乗り、エヴァンズの作った第二紅岸基地に赴いた。第二紅岸基地は6万トン級タンカーを改造して作られていた。船の名は〈審判の日〉(ジャッジメント・デイ)だった。エヴァンズは葉文潔(イエ・ウェンジエ)に教わった周波数と座標を使って三体世界からのメッセージを受信していた。三体艦隊はすでに出発しており、太陽系には450年後に到着すると述べた。
船には地球三体協会の初代メンバーだった。
葉文潔(イエ・ウェンジエ)は地球三体運動の総司令官になって欲しいと請われ了解した。

29 地球三体(アース・トライソラリス)運動

地球三体協会(ETO)は精神的貴族の組織と言われる。社会的に高い階級のメンバーが多い。
こんなにも自らの種を滅ぼそうとする人間が多い点はショッキングだった。
最初に結成された時、各国政府は特な注意を払わなかった。
ETOが武力を拡充し始めて初めて対応を取り始めた。ここ二年ほどのことだった。
葉文潔は総帥となっていたが単に精神的なリーダーであり組織の運営には関わらなかった。

ETOはいくつかの派閥で構成されている。
一つはマイク・エヴァンズの「種の共産主義」の信奉者により構成される降臨派。降臨派のモットーはエヴァンズの言葉だった。

「「われわれは、異星の文明がどのようなものか知らない。だが、人類のことは知っている」」
—『三体』劉 慈欣著 78%

もう一つは救済派。三体教という宗教団体である。
アルファケンタウリをオリンポス山すなわち神々の住む土地と考えて、危機に瀕した主を救うことを目的としている。
VRゲーム『三体』を使って会員を増やしている。
この二つの派閥は内紛を起こしており武力衝突寸前の状態になっている。

最後に生まれたのが生存派。社会的に階層が低い人々が多く、東洋人、特に中国人が多い。
450年後の最終戦争を子孫が生き延びることを目的としている。

30 ふたつの陽子

再び葉文潔に対する尋問のシーン。
降臨派が差し止めていた、三体世界からの情報とは何かを問われたがわからないと答える。
葉文潔は第二紅岸基地が降臨派に独占されてから第三紅岸基地を作ったが、受信装置ができたところで建設はストップし、解体された。
アルファ・ケンタウリの方角からはなんの通信もこなかったからだ。
尋問者も四年前には三体世界からの通信は止まったと述べる。

次に尋問者は、葉文潔にマイク・エヴァンズに嘘をつかれたかと問いた。
葉文潔は、マイク・エヴァンズが地球上の人類以外の種への使命感からそこまで極端な思想に至っていたこと知らなかった。
救済派、生存派も葉文潔の想像と異なる行動に出ていた。
尋問者は、なぜエヴァンズを止めなかったかを訊いた。
葉文潔は、エヴァンズと降臨派は第二紅岸基地〈ジャッジメント・デイ〉に籠もっており、攻撃して三体世界からのメッセージを破壊されるのを恐れたのだと答える。

三体世界では数十年で反物質との対消滅を使った航行技術が確立された。これにより最大で光速の十分の一程度の速度が出せる。それ以前は光速の数千分の一しか出せなかった。
船体の前方に漏斗状の磁気シールドを展開し、反物質を収集するため常に加速できるわけではない。
葉文潔は、六年前に三体文明は二つの水素原子核=陽子を地球に向けて光速で打ち出したという。これにより地球の科学の発進歩は封じられているという。

ここで尋問のシーンから切り替わる。作戦司令センターから出てき汪淼(ワン・ミャオ)と丁儀(ディン・イー)が会話している。おそらく尋問シーンは汪淼と丁儀が読んだものなのだろう。

定義は汪淼に説明する。この宇宙では、マクロ世界の三次元+時間以外にマクロに折り畳まれた7つの次元の合計11次元が利用可能だが地球文明は四つの次元しか使えていないが三体文明は11の次元を使いこなしているのではないか。

31 古箏(こそう)作戦

作戦司令センター。
徹底的に除染された史強が汪淼と話している。
史強は灰皿の葉巻の吸い殻を拾いあげて火をつけて吸う。
その葉巻を捨てた米海兵隊のスタントン大佐が軽蔑の眼差しを向ける。

常偉思(チャン・ウェイスー)少将が〈ジャッジメント・デイ〉にある三体世界からの通信記録を入手することが必要であり、四日後にパナマ運河を通過する〈ジャッジメント・デイ〉に攻撃を加える予定でそのための作戦を三つ程度提案する予定だという。
ここで自衛隊から来ている士官が、内通者に通信記録を押さえさせたらどうかというが、そもそも内通者はいないという。

「「じゃあ、その案はそこまでだな。まったく、無駄な議論をさせやがって」史強がひとこと口をはさむと、間髪いれず、大勢からぎろりとにらまれた。」
—『三体』劉 慈欣著 81%

スタントン大佐は<<球電兵器>>(劉慈欣の他作品で登場した兵器らしい)を使ってはどうだと提案するが防御されていて無効だろうという結論になる。「では、中性子爆弾は?」というスタントン大佐、少し物騒では?
中性子爆弾も即死はしないということで却下される。
史強は皆を煽り立てた上で自説を述べる。
パナマ運河の両岸に柱を立て、汪淼の開発しているナノマテリアル”飛刃”(フライング・ブレード)のワイヤーを0.5m間隔で貼る。
汪淼は既存の飛刃で足りるか確認をする。
パナマ運河は狭いところで150m、〈ジャッジメント・デイ〉の高さは31m、喫水8m。
十分足りる。
毛髪の十分の一の細さのナノマテリアルであれば最悪ハードディスクやCD-ROM等を切断しても復元が可能だという。
(毛髪が0.08mmだとして十分の一だと0.008mm、8マイクロメートル。CDの記録のピットは0.5マイクロメートルなのでパターンは確かに復元ができそう? より高密度なハードディスクはどうなんでしょうか)

具体的な検討が続く。
時間が足りないので喫水下は諦めた。機関が置かれて振動がある船底にコンピュータ室を置くことはないだろうとの判断。
閘門であれば最短の長さで良いと提案されるが、敵も最も警戒しているし、閘門では船はミュールという電気機関車に曳航されるため速度は遅く途中で気づかれるため。

ゲイラード・カット(人工掘削部で非常に河道の幅が大変狭い)。
ただしそれでも幅は150m、柱を立てるとなると170mは必要となる。汪淼は幅は0.5m程度が最小だという。それ以上の密度で張るにはワイヤーが足りない。
史強は、であればそこを通らせるのは昼が良いという。
夜だと寝ている人間が仕留められないからだ。

汪淼は無辜の人間が犠牲にならないか心配になり色々聞くが常偉思少将は、それは科学者の考えることではないと静止する。
それまで史強のことを馬鹿にしていたスタントン大佐は極上のハバナ産葉巻を史強に贈呈する。

四日、汪淼はパナマ運河にいた。
パナマ運河の両岸には長さ24mの支柱が二つ寝かして用意され、その間には160mのワイヤーが50本張られている。

作戦のコードネームは古箏、切断網は琴と名付けられた。
スタントン大佐は汪淼にパナマ運河に来たことがあるか尋ねた。
無いと答える。

スタントン大佐は1989年の12月、ノリエガ将軍を打倒すべくアメリカがパナマに侵攻した時に来たことがあるという。
〈ジャッジメント・デイ〉が4km手前まで来たところで琴を立てる。
汪淼はひどく緊張した。
スタントン大佐は話し続ける。1999年のパナマ運河の返還式典でまたパナマを訪れたこと、宇宙エレベーターで汪淼はゲイラード(パナマ運河を建設したエンジニア)のようになるはずだ。
6万トン、パナマックス(パナマ運河を通れる最大クラスの船)の〈ジャッジメント・デイ〉が姿を表す。
何事もなく船は進む、汪淼は、一瞬”飛刃”は張られていないのでは無いかと誤解した。
〈ジャッジメント・デイ〉の上のアンテナが切断され転がり落ちる。甲板で作業していた船員が両断される。
次にクランクシャフトが切断され、船体を突き破って川に落ちる。
船は四十以上にスライスされ、バラバラになっていく。
すぐに隠されていたヘリが消化剤を撒く。

三日後。
また尋問。
葉文潔は事の次第を聞かされているようだった。
エヴァンズはどうなったかと聞くと、尋問者は三つに切り裂かれて死んだという。ただ、切り裂かれた状態で三体世界からの通信が保存されたパソコンへと這い進んだ跡があったと。
通信データは28GBあった。
葉文潔は驚く。星間通信は恐ろしく効率が悪く、そこまで大量のデータがあるはずがないという。

32 監視員

1379号監視ステーション

監視員

国家元首

執政官

三体艦隊総司令官

33 智子(ソフォン)

34 虫けら

35 遺跡

ここまでで85%。これ以上は本を買ってお読みください。誰がなぜメッセージを返したのか、陽子が一体何をしているのか、驚愕の話がまだまだ続きますよ!


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Last-modified: 2024-06-19 (水) 00:11:47